ハンガリーは、深刻な少子化に直面し、2010年以降、オルバーン政権のもとで「異次元」とも称される大規模かつ独自性の高い少子化対策を実施しています。これらの政策は、移民に頼らず自国民の出生数増加を目指す点が特徴です。
主な少子化対策
1. 経済的支援の拡充
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有給育児休暇の延長
3年間の有給育児休暇が認められており、出産前の給与の約7割が支給されます。 -
多子世帯への所得税免除
4人以上の子どもがいる母親は所得税が完全に免除されます。1~3人の子どもでも段階的な税控除があります。 -
住宅・自動車購入補助
3人以上の子どもがいる家庭には住宅購入補助や新車(7人乗り以上)の購入費用補助が支給されます。 -
無利子貸付や結婚奨励金
若いカップルへの無利子貸付や結婚奨励金など、結婚・出産を後押しする制度が用意されています。 -
学生ローン返済免除
子どもを産むことで学生ローンの返済が免除される仕組みもあります。
2. 医療・不妊治療支援
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体外受精費用の全額補助
第1子は5回まで、第2子以降は4回まで体外受精費用を全額補助。医薬品も100%保険適用です。 -
不妊治療専門機関の設置
全国に国営の不妊治療専門機関を設け、医療体制を強化しています。
3. 教育・保育環境の整備
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保育園数の増加
保育施設の拡充で、女性が出産後も働きやすい環境を整えています。 -
家族の大切さを教育
小学校から家族の重要性を教育し、家庭を築く価値観を育てています。
政策の規模と成果
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GDP比での支出
少子化対策にGDPの約5%(日本は約1.7%)という巨額の予算を投じています。 -
出生率の回復
2011年に1.23まで落ち込んだ合計特殊出生率は、2021年には1.59まで回復しました。 -
結婚数の増加
結婚数も大幅に増加し、若い世代の家族形成への不安が軽減されています。
独自性と課題
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独自の受給条件
支援策には「初婚」「一定の就労経験」「年齢制限」など独自の条件が設けられており、伝統的な家族観の反映が見られます。 -
社会的課題
経済的に余裕のない家庭やLGBTQなど一部の層が支援の対象外となる点、住宅価格の高騰など新たな課題も指摘されています。
まとめ
ハンガリーの少子化対策は、家族・子育て世帯への大規模な経済支援、医療・教育の充実、伝統的家族観の奨励を柱とし、短期間で出生率の大幅な回復を実現しました。一方で、政策の受給条件や社会的包摂性、住宅価格の上昇といった新たな課題も生じており、今後の持続可能性や公平性が注目されています。
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